
かつては安定していて比較的高収入の職種として学生から人気だった銀行員。
10年ほど前は人気の就職先としてメガバンクが上位にランクインしていました。
しかし、
- 最近は低金利による業績不振
- 業務効率化のためのAIの導入
- 大量リストラ など
ネガティブなニュースが多く、世間からの銀行の印象はあまり良くないようです。
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— 紀伊國屋書店大手町ビル店 (@Kino_Otemachi) April 21, 2018
実際に銀行員の年収水準にも影響があるのでしょうか。直近の調査を基に銀行員の年収事情を紹介していきます。
メガバンク総合職出身のライター。銀行員時代は法人営業や法人決済部門で働く。結婚を機に商社の営業事務へ転職。出産後独立し、現在は子どもを2人育てながら金融、キャリア、育児などの記事を執筆。
銀行員の年収は約609万円が相場
まず、銀行員の年収相場について紹介します。
銀行員の年収相場は平均よりも高い
2020年3月期に行われた東京商工リサーチの調査によると、国内銀行79行の平均年収は608万8,000円であることがわかりました。銀行の種類別で見てみると以下の通りです。
- 大手行 762万5,000円
- 地方銀行 621万4,000円
- 第二地銀 550万8,000円
国税庁の民間給与実態調査によると、令和元年における日本人の平均年収は約436万円となっているため、銀行員の年収水準は高いといえるのではないでしょうか。
こちらの調査では総合職と一般職も混ざった結果となっていますが、一般的には総合職の年収の方が、事務仕事などが中心となる一般職の年収より高いです。
総合職の場合、転居を伴う転勤があったりノルマが厳しかったり、幹部候補として取得する資格が多かったりすることが年収を押し上げる要因となります。
参考:東京商工リサーチ|2020年3月期決算 国内銀行79行「平均年間給与」調査
メガバンクと地方銀行では年収の差がある
メガバンクの総合職は1,000万円プレイヤーにもなれるといいますが、本当なのでしょうか。実際にメガバンク勤務で働いている人に聞くと、それは正しいようです。
しかも、順調に昇格すれば、30歳前に1,000万円の壁を越えられます。課長クラスでは1,300万円、支店長クラスでは1,500万円ほどになり、平均的なサラリーマンの年収を考えるとかなり良い方といえるのではないでしょうか。
地方銀行の総合職の年収
一方で地方銀行の総合職の年収は、所属する銀行や地域によって大きく異なります。1,000万円を超えることができるのは、部長や支店長クラスになってからという場合が多いようです。
初任給はメガバンクも地方銀行も20万円程度とそこまでの差はありませんが、メガバンクは若手の内は毎年5〜7万円ほど昇給していき、役付きになるタイミングでも大きく年収が増えるのでこのような差がついてきます。
なぜ大きく年収差が開くのか?
このような差がつく理由として、メガバンクのノルマの大きさがあります。メガバンクが取引する企業は大手企業から中小企業まで幅広くありますが、どの銀行も更にシェアを広げるために毎年ノルマは厳しくなっています。
融資だけではなく、保険や投資信託の販売・決済・外為・海外連携などノルマの内容は多く、すべてを達成しなければ評価されません。ノルマ達成するために休憩時間なしで働くことも珍しくはないようです。
メガバンクの方が還元される給与額が大きい
このように働く環境は非常に厳しくなりますが、会社としての利益が大きくなる分、還元される給与は地方銀行などに比べると高くなります。
また、メガバンクの場合転居を伴う転勤が多く、全国各地や世界の拠点に本人の希望に関係なく辞令がでれば引っ越さなくてはいけないからということが挙げられます。
銀行員の転勤は国内の場合、1週間で引き継ぎをして次の拠点に移ることになります。本人だけではなく家族にとっても大きな負担になるので、その分年収水準も高くなるわけです。
福利厚生の良さにも注目|手元に残るお金も多い
銀行の給与水準は全体的に高いと紹介しましたが、一見関係なさそうな福利厚生の良さにも注目してください。たとえば、多くの銀行は若手には寮、家族がいる人には社宅が用意されており、好立地な場所に数千円〜数万円程度で住むことができます。
年収の高さだけではなく、家賃にお金がかからなくなる分、手元にお金を残しておくことができます。 また、食堂がある場合は100〜300円程度で昼食を食べることができ、食堂がない場合は別途昼食手当てとして1万円ほど支給される銀行もあります。
このような手厚い福利厚生に驚く人も多いのではないでしょうか。年収だけではなく、福利厚生の良さで手元に残るお金も減りにくくなっています。
銀行員が相場以上の年収に上げる為にやるべきたった2つのこと
上記では、銀行員の年収が高いということを紹介しましたが、出世争いも激しく、すべての人が平均額や平均を超えてもらえるわけではありません。では、どうすれば年収水準を上げることができるのでしょうか。
ノルマ以上に実績を残す
銀行で働く場合ノルマが与えられますが、そのノルマを達成することができれば賞与が増えたり、出世して給与テーブルが上がったりします。ノルマの内容は細かい項目に分かれていますが、一つだけノルマを達成すれば良いわけではなく、すべての項目で達成することが大切です。
そのため、期の始めにノルマが決まったら『どの担当先で』『どの案件』をクロージングさせて達成するかということを組み立てて、期末までに間に合うように自分の担当先にアプローチしていきます。
また、このノルマは支店単位になるため、自分のノルマが終わったら仕事は終わりというわけではありません。
支店のノルマが達成していない場合は、できていない人に代わり実績を積み上げる必要があります。ここで自分のノルマ以上に案件をバンバン決めて活躍できると評価も高くなりますし、評価が良く出世ができれば給与水準も上がるので、「ノルマ達成は当然、ノルマ以上に実績を残す。」というスタンスで仕事に臨みましょう。
資格試験に合格する
銀行によっては、資格試験に合格することにより祝金や賞与が出たり、資格給として月給が上がったりして、年収が上がる場合もあります。
銀行員として評価されやすい資格は、ファイナンシャルプランナー・宅検・簿記・中小企業診断士・TOEICなどがあります。実際の業務にも活かすことができる資格なので、挑戦してスキルアップと年収アップの両方を狙うべきといえます。
未経験から高年収の銀行員に転職は可能?
給料や福利厚生が良い銀行員になりたいという人もいらっしゃると思います。転職で銀行員を目指すことはできるのでしょうか。
金融業界未経験者の中途採用は少ないのが現状
「銀行の常識は世間の非常識」と言われることが多いですが、銀行のルールは大変厳しく、銀行としても中途の人を育てるよりも新卒を育てた方が良いという風潮になっています。
たとえば、お客さまの預かった書類がなくなれば支店中の人で捜索して、見つかるまで帰ることができないなど、他の業界ではあり得ないほど情報管理に厳しいです。このような銀行員としての常識を中途の人に覚え込ませるのは困難なので、何割かは辞めることを前提に新卒で多めに採用するので、中途採用は少なくなっています。
ただし、転職サイトを見てみると「未経験可能」と謳って中途採用している銀行もあるため、必ずしも業界未経験が不可能というわけではありません。このような環境に耐えられると思うならば挑戦してみても良いのではないでしょうか。
ストイックに実績を積み上げられる人間が求めらる
銀行員には大きなノルマが課せられるので、ノルマに対してストイックに取り組める姿勢をアピールできると有利に働きやすいです。
また、その目標を達成するためにどのように作戦を立てたのか、上手くいかなかったときはどのように対応したか、などを説明できると仕事を任せられるかの判断がしやすくなるでしょう。
転職後は勉強詰めの毎日になる覚悟は必要
特に未経験で銀行員になる場合、入社後は資格取得のために勉強漬けになる覚悟が必要です。入社してすぐに証券外務員資格・損保募集人資格・生保募集人資格・内部管理責任者資格などを取得しなくてはいけません。
その他にも業務に合わせて財務、法務、税務、簿記、ファイナンシャルプランナー・宅建などの勉強をすることになり、数年間はプライベートの時間も勉強に充てる覚悟が必要です。
ITに強い人が求められるように
最近ではフィンテックと呼ばれる金融とITを掛け合わせた分野が注目されており、決済分野などのシステム構築にIT分野に強い人材が求められるようになっています。ほとんどの銀行員はこのような知識がないので、今後はIT知識を持つ人材がますます必要です。
従来の銀行員のイメージとはかけ離れるかもしれませんが、今後はITに強くプログラミングなどを任せられる人材は銀行に入りやすくなると予想されます。
定年が早い点には注意が必要
銀行員の年収は、若いうちから高水準になりますが、銀行員の多くは50歳前後で定年を迎えるということに注意をしておく必要があります。銀行員の進路は、本店の部長や本部の室長などの超エリートは役員コース、支店長や副支店長経験者などは取引先の経理部などに出向します。
出世できなかったらどうなる?
また、出世できなかった人は銀行内のヘルプラインなどの裏方的な部署へ異動となることが多いです。
役員コースへ行く場合を除いて年収は下がることになり、年収1500万円もらっていた50歳のメガバンクの支店長経験者が、出向後は年収800万円で取引先の中小企業の経理部長になるということも珍しくはありません。
そのため、生涯年収を考えるとそこまで高いとはいえない場合もあります。
特に、子どもがいる場合は、大学の学費などで一番お金が必要な時に年収が下がるので、若いうちに年収が高いからと言って使いすぎてしまうと、後から生活が厳しくなる可能性があるので気をつけなければいけません。
銀行員への転職を成功させる4つの方法
それでは、銀行員転職に成功するためにはどうすれば良いのでしょうか。
金融知識を学んでおく
上記でも銀行員は資格がたくさん必要になるということを説明しました。銀行員になりたいのならば実務経験がなくても資格が取れる簿記・ファイナンシャルプランナー・宅建などの資格を取っておくと、少なくとも「やる気がある」というアピールになります。
特に法人営業を志すのであれば、企業に融資できるかの基準になる格付を行う必要があり、そのために財務諸表を読む必要があります。そのため、最低でも簿記3級は取得しておいた方が入社後スムーズに業務に取り掛かることができるでしょう。
転職後はまず銀行のルールを覚える
銀行のルールは非常に細かく厳しいものが多いです。いくら営業成績が良くてもルールを破ることにより出世ができなくなったり、場合によっては降格となってしまったりという可能性もあります。
特にお金や手形などやお客さまの情報の取り扱いには非常に厳しく、お客さまの大切な資産をなくす事がないように厳格に管理されるのです。
ルールを守らずに自分にとってマイナスになるようなことがないように、入社後は気をつける必要があります。
ノルマに愚直に取り組む姿勢が大切
銀行員はノルマが多く、ノルマに対する達成率により昇格や異動が決まります。個人に対するノルマと共に支店に対するノルマもあるので、愚直に取り組み支店の成績を押し上げてくれるような存在が求められます。
自分のノルマだけではなく、支店のノルマのことも考えて、営業に対する士気を上げるなどのアシストができると「頼りになる人だ」と思われて、転職者でも仕事がしやすくなると思われます。
なぜなら、支店の成績により支店長の人事も決まるからです。前職で営業をしていた場合、どれくらいの目標に対して何%実績を積み上げられたかと具体的な数字を出して説明しましょう。
金融業界に特化した転職エージェントを利用する
転職エージェントを使うことにより、年収・勤務条件・福利厚生などを具体的に知ることができるので、ミスマッチが少なくなります。
自分でそれぞれの銀行にアプローチしていくよりも、転職エージェントを利用して自分のスキルでも大丈夫かを客観的に見てもらえる方が効率的に転職活動を進めることができます。
また、自分では探し出せなかった求人を紹介してもらえる可能性もあり、転職活動では転職エージェントを使った方が成功率も上がりやすいです。
金融業界の転職に強い転職エージェント3選
最後に、金融業界の転職に強い転職エージェントを紹介します。効率的な転職活動をするために登録だけでもしてみてはいかがでしょうか。
コトラ|金融・コンサルに強い転職エージェント
コトラは金融・IT・コンサルなどに特化した転職エージェントです。経験者などのプロフェッショナル向けで、年収800万円を超える求人も数多く掲載されています。即戦力を求めている企業が多いので、金融業界経験者でキャリアアップのための転職を目指す人に向いているエージェントです。
マイナビ金融エージェント
転職エージェント大手のマイナビが金融業界に特化した転職エージェントです。キャリアイドバイザーも金融業界出身者で構成されており、信頼できる経験談や頼りになるアドバイスを受けることができます。
参考:https://mynavi-agent.jp/finance/
ムービンストラテジックキャリア
ムービンストラテジックキャリアは、リクナビNEXTエージェントで総合満足度1位を獲得するなど、求職者に寄り添って転職活動をアシストしてくれることが特徴です。コンサルタントが志向や、これまでの経験にマッチする企業を探し出してくれ、転職後も無料でキャリア形成のサポートをしてくれます。
参考:https://www.movin.co.jp/finance/
おわりに
銀行員の仕事は「お金に困っている人や企業にお金を貸して成長の手助けをして経済を活性化させる」という、責任は重いですが非常にやりがいのある仕事です。
最近はネガティブなニュースが多いですが、未だに年収相場は他に比べると高く、福利厚生なども恵まれた環境にあります。 しかし、AI技術の導入などにより、今後銀行員を取り巻く環境は厳しいものになると予想され、この年収相場がいつまでも続くとは限りません。
年収を上げるためには、実績を積み上げて「銀行から必要な人間」と思われるのが大切ですし、資格取得などスキルアップのために努力してライバルに差をつけて行くことが大切です。
銀行員は新卒を育てる文化があり転職が少ない風潮でしたが、最近では中途採用をしている銀行もあります。銀行はノルマが厳しいので、ノルマに対して真剣に取り組めることのアピールをすると採用されやすくなるかもしれません。
加えて、各行フィンテック技術の向上が急務になっているため、これからはIT知識のある人材が求められるようになると予想します。
興味がある方は是非挑戦してみてはいかがでしょうか。
転職・人材業界に深く関わるディレクターが『今の職場に不満があり、転職を考え始めた方』や『転職活動の進め方がわからない方』へ、最高の転職を実現できる情報提供を目指している。
本記事はキャリズムを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
※キャリズムに掲載される記事は転職エージェントが執筆したものではありません。
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