「仕事中に巨大地震が!」起こり得る状況と身を守る方法【専門家監修】

いつ自然災害が起こるか、誰にも予想が付きません。
日本は地震大国と呼ばれるほど地震が多い国ですが、もし仕事中に巨大地震が起きた時は何が起こり、どのように対処していけばいいのでしょうか。
いざという時、自分を守れるようにするには情報を得ることが必要不可欠です。
記事監修 |
高荷智也(ソナエルワークス代表|備え・防災アドバイザー) 「自分と家族が死なないための防災対策」と「中小企業の身の丈BCP策定」のポイントを解説するフリーの専門家。分かりやすく実践的なアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。1982年、静岡県生まれ。 公式サイト「備える.jp」 |
仕事中に巨大地震が起きたらどのような状況になるのか
まず始めに、巨大地震が起きた時はどのような状況になるのかを見ていきましょう。ここでは巨大地震をM7クラスと想定してお伝えします。
社内にいた場合に起こり得る状況
建物の中にいた場合は、その場に立っていられないほど強い揺れを感じます。建物の構造により程度は異なりますが、上の階にいるほど揺れは大きくなるでしょう。
その反対に、地下にいる場合は上にいる人よりも地震を感じにくく、被害も減ります。
次に室内の状態についてですが、地震によって窓ガラスが割れて破片が飛び散り、天井パネルや照明器具、机の上の物が落下し、辺り一面に散乱します。ロッカーの扉が開き、私物も床に散らばるでしょう。
家具や家電、コピー機や書庫などの事務機器も次々に転倒するでしょう。場合によってはそれらが出口を塞いでしまう恐れもあります。
また、停電の恐れもあります。たとえ会社に非常用発電機が設置されていても、通常の照明やコンセントには供給されないこともあります。
そのため、夜に巨大地震が起きたなら辺り一面が真っ暗になり、周囲の状況を把握するのが難しくなるでしょう。
ビルの中であれば、地震による火災の影響で防火扉が閉まっていたり、エレベーターも稼働していなかったりと、普段と見え方や移動ルートが異なっている場合もあり得ます。
このように、いつもの仕事場の状況とは一転し、日常生活では考えられない事態が次々と起こります。
外出先にいた場合に起こり得る状況
外出先で巨大地震が起きた場合、オフィス街であれば、ビルの窓ガラスや壁パネル、看板などが頭上から落下してくる可能性があります。
住宅街であれば木造住宅の倒壊、ブロック塀や自動販売機の転倒、切れた電線やベランダからの落下物などにも気をつけなければなりません。
建物やブロック塀が倒壊し、ガラス片が頭上に降ってくる可能性もあります。
電柱や自販機なども転倒するでしょう。住宅地の場合は、ベランダからの落下物にも気をつけなければなりません。
場所によっては、道路が陥没したり、液状化したりする可能性も考えられますし、大規模な地震火災が発生して身動きが取れなくなる可能性も…。
また、交通機関がストップし、都心の場合は行き場を失った帰宅困難者で溢れかえることになります。
夜であれば停電によって信号機や街灯が消え、辺り一面が暗闇に包まれます。
車の運転をしたくとも信号機が作動しておらず、また道路がガレキや避難者で溢れている可能性もあるため、想像を超えた街の状態に困惑することでしょう。
巨大地震から身を守るためにはどのように行動するべきなのか
突然の事態にパニックになるかもしれませんが、このような時こそ冷静に行動することが大切です。
焦らず落ち着いて頭を守る
地震が起こった時、もしくは緊急地震速報が流れた時は、天井パネルや照明などの落下物、ガラスの破片から頭を守りましょう。バッグや座布団、クッション、とにかく身近にあるものを活用してください。
デスクの下に身を隠す方法もありますが、デスクが頑丈であることが前提になります。ガラス製デスクや、薄い板でできたデスクの下に身を隠してしまっては、かえって危険です。
また、頭を守る際ですが、大きな血管が流れている手首を内側に折り曲げて守るようにしてください。そして、揺れが落ち着いたら周囲に窓や家具がない開けた空間に速やかに避難しましょう。
避難した後は余震が続くこともあるので、指示があるまではその場で待機してください。パニックになっている同僚、上司、部下などがいたら冷静になるよう伝達することも重要です。
エレベーターの中で地震に見舞われたら全ての階数のボタンを押す
平成21年以降製造のエレベーターであれば、「地震時管制運転装置」という地震感知器によって、揺れを感知すると近くの階に自動で停止してドアが開くという装置が備わっています。
自社のエレベーターに装置がついているのか分からないという方も多いと思いますので、地震の際は迷わず全てのボタンを押し、ドアが開いたらすぐに脱出しましょう。
もしも閉じ込められてしまった場合は、非常ボタンを押して救助を待ちます。エレベーターが突然動き出したり、落下したりする危険性があるので、無理やりドアを開けること、天井から外に出ようとすることはやめましょう。
怪我の具合を確認する
自分も含め、職場の人たちが怪我をしていないかを確認しましょう。気が動転している時は、怪我をしていることに自身では気がつきにくくなります。
こういう時こそ職場でのチームワークを発揮し、お互いに確認し合ってください。怪我人がいた場合は避難後に怪我の具合を確認し、安全なところで手当てをしましょう。
情報を得る
社内にテレビがあったとしても停電時は利用ができず、ラジオがあっても瞬間的に災害情報を入手することは難しいため、基本的には、外の状況・地震による被害状況は把握しづらくなるでしょう。
一体どれほどの被害がでているのか、交通機関への影響はどの程度なのかなどを知るためにもスマートフォンを使用して少しでも多くの情報を得ることが大切です。
電気が止まると固定電話は使えなくなることが多いですが、携帯電話のメールやインターネット回線を用いたSNSは基地局が生きている限り使用できます。
まずは地震による二次災害(津波・浸水害・土砂災害・大規模火災)が生じていないか、また交通機関はどうなっているのかなど、情報元が確かなところからの情報は少しでも多く集めてください。
部署内でLINEグループを作っておいたり、LINE NEWSを友だちに追加しておいたり、防災アプリを携帯に備えておいたりすると便利です。
不測の事態でも安否確認や情報共有ができるよう、『安否確認システム』を導入している企業もあります。
グループトークに一斉に送信すると、自分の状況を知らせるだけではなく、既読のマークによって相手の安否状況を知ることもできます。
集団行動をする
二次災害に巻き込まれてケガをしたり、被災地における犯罪被害に巻き込まれたりする恐れがあるため、特に非常時の夜間における単独行動は避けるべきです。
社内にとどまる場合、また安全確認後に徒歩で帰宅する場合も、できるだけ複数人で行動をしたり、同じ方向へ帰宅するメンバーと集団で行動したりするなどが大切です。
電車に乗っていた場合は係員の指示に従う
もし地震発生時に電車の中にいた場合は、手動でドアを開けて勝手に逃げるなどの行動は絶対に避け、必ず係員の指示に従いましょう。
パニック状態で逃げようとすると、周囲の人のパニックも誘発し、同じように逃げる人達の群れに巻き込まれて転倒して怪我をする恐れがあります。
地震が起こる前に緊急避難速報が確認できることもあるので、日頃から急停止に備えてつり革や手すりに掴まっておくのがよいでしょう。
運転中の場合は一旦停車して徒歩で避難する
運転中に地震の強い揺れを感じた場合、ゆっくりと減速をして車線左側へ一時停車し、緊急車両を通行させるため、空き地や駐車場があれば車を移動させます。
歩行者の妨害をしないためにも、歩道への乗り上げをしてはいけません。
緊急時ですので、車のキーはつけたままにしておいてください。万が一停めた車が緊急車両の通行の妨げになった場合に、すみやかに車を移動できるようにするためです。
もし、揺れが早くにおさまり、被害状況が把握できない場合は安全な場所に車を停めた上で、車中待機しましょう。
自分の安否について伝達をする
自分の安否状況を周囲に知らせたいがスマートフォンが繋がりにくいという場合は、公衆電話を使うのも良いでしょう。今はなかなか見かけなくなりましたが、緊急時でも比較的繋がりやすいと言われています。
営業回りや訪問など、外に出る仕事がメインの方は、非常時の公衆電話利用や現金での買い物に備えて、硬貨を持ち歩くのもよいでしょう。
電話以外の方法で自分の安否状況を周囲に知らせるなら、LINEのノートやステータスに記入したり、災害時に開設される災害用伝言ダイヤルで安否情報を録音したりすることが有効です。
録音するには、局番なしで171に電話をしましょう。
備えあれば憂いなし!いざという時に使える防災グッズ
ここでは、いざという時に使える防災グッズをご紹介します。
携帯充電器とバッテリー
携帯充電器とバッテリーは、必ず用意しておくことをおすすめします。スマートフォンは情報収集、安否確認、防犯などのためにはなくてはならないものです。
けれども、大地震で停電が発生した場合、充電が無くなると被害状況や安否状況を知る術がなくなります。どちらもかさばるものではないので、鞄に入れて持ち歩きましょう。
スニーカー
女性は日頃からヒールを履くことが多いと思いますが、緊急時は割れたガラスや落下物が散乱したり、道路が陥没、液状化したりすることがあるので、長時間歩くには不向きです。
もしものときのために、会社のロッカーに歩きやすくて疲れにくいスニーカーを用意しておくといいでしょう。
ホイッスル
ホイッスルは、万が一ガレキの中などに閉じ込められてしまったときに非常に便利なグッズです。叫んで助けを求めることも可能ですが、いつまでも叫び続けることは難しく、それだけ体力も消耗していきます。
大声を出すよりも少ない息で音が出せるホイッスルがあれば、体力を温存しつつ、簡単に自分の居場所を外部に知らせることができるのでおすすめです。
こちらもかさばるものではないので、ポーチに入れたりネームプレートのネックストラップに取り付けたりしておくと良いでしょう。
LEDタイプの懐中電灯
辺り一面が暗闇に包まれると、足元の状況も分からず、怪我をするかもしれません。停電時に備えて、LEDタイプの懐中電灯を職場に備えておくことも大切です。
女性用ナプキン
女性用ナプキンは本来の役割以外にも、傷口の広がりを防ぎ、止血するのにも有効です。女性の方はこちらもいくつかポーチに入れて職場に置いておくとよいでしょう。
ちょっと待って!地震災害時の間違った行動
地震が起きた時、自分の身を守る為にとった行動が逆効果になってしまうことがあります。突然の事態に、パニックになってしまう人も多いのですが、そんな時こそ冷静な対応が求められるのです。
書棚や電化製品が倒れてこないように押さえる
巨大地震が起きると、書棚や電化製品も大きく揺れます。この時、倒れてこないように支えようとするとそれらの下敷きになるかもしれません。
また、家具を押さえている時に照明器具や天井パネルなどの落下物によって怪我をする恐れもあります。地震が起きた時は、まず自分の身を守ることを最優先に考えましょう。
指示を待たずに自宅へ帰る
状況がわからない状態で勝手に自宅に帰ることもやめましょう。徒歩帰宅中に二次災害に巻き込まれたり、また社内の安否確認や点呼にも支障をきたしたりする恐れがあります。
地震が起こったのが業務中であれば、原則として会社からの指示に従ってください。
誰にも言わずに職場から離れると、行方不明者と判断されるかもしれません。また、同じように自宅に向かう人達でごった返してしまうので、かえって帰宅困難になり、途方に暮れてしまう可能性も考えられます。
まとめ
地震大国に住んでいる限り、いつ、どこで、巨大地震が起きてもおかしくない状況です。
いざという時に自分の身を守るためには、日頃から地震が起きた時、社内はどのような状況になるのかを想定し、様々な情報を収集して危機管理意識を高めておくことが大切です。
不測の事態が起きた中での適切な行動はケースに応じて様々ですので、実際の現場では状況に応じた最良の判断が求められることもあります。
避難経路を歩いてみて危険な箇所はないか、逆に安全そうな場所はどこか、最悪の状況までシミュレーションしておくと、巨大地震が起きた時に冷静に対処することができるでしょう。
大地震に備えてBCP(事業継続計画)を策定し、特に発災直後に対応するための初動対応マニュアルなどを作成するなども有効です。
大地震が起きるかどうかではなく、起きたとしてどうするか、という考え方での備えをするようにしてください。

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